エンジニアのキャリアパスとしての人事部長

この記事はドワンゴ Advent Calendar 2016の最終日のエントリです。前日の記事は、kwappa によるドワンゴの「技術コミュニケーション室」(技コミ) #とはでした。

エンジニアが人事部長に就任するまで

タイトルを見て「お前は何をいっているんだ」と思われた方もいるかもしれません。しかしこれが実際、今年僕の身に起きた出来事でした。

2009年9月にドワンゴに入社して以来、7年間に渡ってエンジニアとして働いてきました。中でも2013年からの4年間は、特定のサービスやプロダクトの開発に携わるのではなく、上記 kwappa のエントリにあるように「技術コミュニケーション室」の室長として、400人以上いるエンジニア全体の生産性を向上させるというミッションのために働いてきました。

ドワンゴという会社は、非常に個性的なメンバが目立ちがちではあるものの、その実、派手ではない仕事を実直にこなす多くの社員によって支えられています。2012年にエンジニアの大量退職が発生した際にも、残ることを決断した大多数のエンジニアをまとめ上げることができれば、必ずドワンゴはよりよい会社になると信じて、そのために「技術コミュニケーション室」を立ち上げました。結果、現在のドワンゴは大量退職が起きる前よりも、エンジニアにとって働きやすい環境になっていると胸を張って言えます。

しかし、技術コミュニケーション室の室長として「エンジニアの生産性を高める」ために働きながらも、ずっと心に引っかかっていたことがありました。それは**「エンジニアの働きやすさが他部署の犠牲の上に成り立っていてはならない」**のではないかという思いです。

エンジニアには確かに、僕がいて技術コミュニケーション室がある。しかしエンジニア以外の働きやすさを専門に考えてくれる部署などはありません。そのために、エンジニア以外の社員にエンジニアの働きやすさのしわ寄せを押し付けてしまっていないだろうか、という疑問が常にありました。

そんな折、エンジニアの評価制度を抜本的に見直そうという話がもちあがり、それをやるならエンジニアを人事部に送り込んだ方がいいということになり、それならば「採用」や「教育」で人事部との関係性がある程度構築できていた僕が適任だろうということになりました。

どう考えても適任は僕しかいないし、上述の疑問の実態を確かめ、問題があるならそれを解決するためにも「人事部長」というポジションは最適だと考えたため、人事部長になることを快諾しました。要はこれまで**「エンジニアの生産性の向上」**のために働いてきたものを、対象を拡大して**「全社員の生産性の向上」**のために働くことを決断したわけです。

エンジニアが人事部長をする意味

人事部長になったのであれば、もうエンジニアではないのではないかと思われるかもしれませんが、下の社内システムの画像からも分かる通り僕は明確にエンジニアです。では、エンジニアが人事部長になることにはどのような意味があるでしょうか。

社内システム

人事部に異動したのは10月なので、まだ3ヶ月しか人事部で働いていないのですが、それでもエンジニア目線から多くの改善の余地を見出してきています。既に実施した施策についても、僕がコードを書くことで実現が可能だったものもあります。また、エンジニアとしてやってきたプロジェクトマネジメントの手法についても、適用できそうなものについては色々取り入れていこうと考えています。

そしてまた、人事に事業部の現場を知っている人間がいるという事実そのものがとても意味があると考えています。人事のすべての人間がそうあるべきとは思いませんが、少なくとも1人は現場を知っている人がいる(なおかつその1人が人事部長である)というのは、事業部から見たときに少しは安心感と信頼感を与えることができるのではないかと思っています。

あと付け加えるなら、将来的に経営陣に加わっていくことを目指すのであれば、見える世界が広がるという意味でも人事部長は経験しておいて損のないキャリアだと思っています。

エンジニアのキャリアを捨てることについて

人事部長になるということを妻に伝えたときに、まず心配されたのはこの点でした。「エンジニアじゃなくなっちゃうけどいいの!?」と何度も確認されました。彼女には「エンジニアではないうちの旦那」が想像ができないようでした。

確かに人事部長になったことで、業務でプロダクトのコードを書くことは(ちょっとしたツール以外は)なくなりました。しかし、エンジニアのキャリアを捨てたとは考えていません。僕がこれまで行ってきた実績は確かに残ってますし、今後もエンジニアの採用に関わっていくためにも、最前線の技術には積極的に触れていきます。今は全く考えていませんが、必要があればエンジニアに戻ることも可能な状態はキープしていきます。

プログラミングが趣味であり卓越した情報源である社内Slackがあるからこそ、それが可能だと考えています。

人事部長としてのこれから

就任3ヶ月ではありますが、本当に色々なことが起きています。単純な忙しさというよりは、対処しなければいけない問題の幅が広く、会社に与える影響も確実に大きくなりました。それ故に非常にやり甲斐を感じています。

完全に素人の僕が曲りなりにも人事部長ができているのは、人事のプロフェッショナルとして支えてくれている人事部のメンバーと、僕を信じてこのポジションを任せてくれた会長および社長のおかげです。まずは、皆さんの期待と信頼に応えられるよう、やるべきことをやるために全力で邁進していきたいと考えております。

その上で、僕が人事部長である意味と価値を生み出せるような施策に取り組んで参ります。

おまけ

ドワンゴでは現在、中途・新卒ともに積極的に採用を進めています。特に2018新卒採用はエンジニアの採用が先行してスタートしておりますので、興味がありましたら是非ご応募ください。